コラム

海洋瑣談(No.9、2025年2月15日)

「大雪に対する国土交通省緊急発表」の発出

 二十四節季の一つ、「立春」を迎えた今月(2月)3日(火)の午後、国土交通省と気象庁は合同で報道記者発表を行い、この冬2回目となる「大雪に対する国土交通省緊急発表」を発出した(参考URL-1)。記者発表の様子はテレビ各局の夕方のニュースで大きく取り上げられた。

 この発表の本文の最初の項目は次のようなメッセージであった。「日本付近はこの冬一番の強い寒気が流れ込み、強い冬型の気圧配置となるため、2月4日(火)からは北日本からに西日本にかけての地域では、日本海側を中心に山地、平地共に大雪となる見込みです。強い冬型の気圧配置は、数日続く見込みです。」

 記者発表資料には、3日9時の実況天気図と4日21時の予想天気図が示されていた。北海道宗谷岬付近に位置する1012hPaの低気圧はほぼ停滞したまま、翌日には976hPaまで急激に発達するとの予想である。実に36時間で36hPaも気圧が低下するとの予想である。このように急激に発達する低気圧は通常「爆弾低気圧」と呼ばれている。なお、英語でも「The bomb」と呼ばれている。

 その結果、4日には西に高気圧、東に発達した低気圧が位置する、いわゆる西高東低の冬型の気圧配置となり、強い北寄りの風と大雪をもたらすというものであった。また、予想天気図にはJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)も点線で書き込まれ、北陸地方での豪雪の可能性を示していた。

 実際の天候も、3日から4日かけては北海道帯広市付近の地域で大雪となり、芽室町(めむろちょう)では6時間の間で87センチメートルの積雪量であった。1時間で15センチメートル積もるというこの値は、観測史上最高とのことである。

 さて、「大雪に対する国土交通省緊急発表」であるが、災害が発生することが予想されるときに、国土交通省の各局(水管理・国土保全局、大臣官房、道路局、物流・自動車局)と気象庁が発出するものである。国土交通省の「降雪時を想定したタイムライン(防災行動計画)」では、概ね被害の発生が予想される1日前に発出することになっている(参考URL-2)

 この情報が公表されるようになったのは、2014(平成26)年2月14~16日にかけて発生した関東甲信越地方の記録的大雪がきっかけであったとされている。この大雪は南岸低気圧によるもので、広範な地域で交通障害が起こった(参考URL-3)

 これをきっかけの一つとして、同年11月14日に「災害対策基本法の一部を改正する法律案」が成立し、同21日に公布された。この法律では、道路管理者が立ち往生している車両の移動などの処置が可能となった。さらに、同年12月9日には、常設組織として「異例の降雪に対する国土交通省対策本部」を設置することとし、雪害時の防災行動を時系列で整理した防災行動計画(タイムライン)を初めて策定した(以上、参考URL-4を参考にした。なお、URL-2に示した資料がこのタイムラインに当たる)。このタイムラインの中に「緊急発表を実施」が位置付けられている。

以上、「大雪に対する国土交通省緊急発表」が発出されるようになった経緯を記してきたが、これまでどれくらい発出されたのであろうか。ウィキペディアの「大雪に対する国土交通省緊急発表」の記事に過去の発出例が記載されていた(参考URL-5)。これをまとめると以下のようになる。

 2015/16年の冬季:1回、2016/17年:3回、2017/18年3回、2018/19年:0回、2019/20年:0回、2020/21年:4回、2021/22年:3回、2022/23年:3回、2023/24年:1回、2024/25年:これまで2回。

 統計的な処理など全くできる対象ではないのだが、それでも、最近多くなっているようにも思える。そして、これには地球温暖化が関係しているように思えるのである。先に記した「爆弾低気圧」の発生数が近年増えているが、この背景には地球温暖化があると筆者は考えている。

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