研究ハイライト

海洋細菌の新たな光エネルギー獲得戦略
―ロドプシンの集光アンテナと光サイクル加速色素の発見―

2025.09.03

  • 東京大学
  • 理化学研究所
  • 海洋研究開発機構
  • 東北大学・海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所 (WPI-AIMEC)

 東京大学大学院新領域創成科学研究科の吉澤晋准教授、同大学物性研究所の井上圭一准教授、理化学研究所の白水美香子チームディレクターらによる研究グループは、海洋研究開発機構、変動海洋エコシステム高等研究所、生産開発科学研究所、東京農業大学と共同でロドプシン(注1)の新たな光利用効率化システムを報告しました。

 近年、植物などの光合成生物とは異なり、ロドプシンという光受容タンパク質を用いて光エネルギーを化学エネルギーに変換する微生物が数多く存在することが分かってきました。本研究グループは、海洋に最も多く存在するロドプシン(プロテオロドプシン)が、光の利用効率を高める2つの仕組み―「集光アンテナ」と「光サイクル(注2)加速色素」―を備えることを発見しました。また、塩化物イオンを輸送するロドプシンにも集光アンテナが存在することを突き止め、これらのロドプシン-カロテノイド複合体の立体構造を初めて明らかにしました。

 以上のことから、ロドプシンの光利用効率化システムが細菌の光環境適応を助け、より深層でも光を受容できる可能性を示しました。

本発見の概略
海洋細菌(Nonlabens marinus S1-08T)のイメージ図

論文

雑誌名:Nature Microbiology
題 名:Carotenoids bind rhodopsins and act as photocycle-accelerating pigments in marine Bacteroidota
著者名:Takayoshi Fujiwara*, Toshiaki Hosaka*, Masumi Hasegawa-Takano, Yosuke Nishimura, Kento Tominaga, Kaho Mori, Satoshi Nishino, Yuno Takahashi, Tomomi Uchikubo-Kamo, Kazuharu Hanada, Takashi Maoka, Shinichi Takaichi, Keiichi Inoue✝, Mikako Shirouzu✝, and Susumu Yoshizawa✝ *(共同)筆頭著者、✝(共同)責任著者

DOI: 10.1038/s41564-025-02109-1

詳細は 東京大学webサイト
をご覧ください。

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