研究ハイライト

栄養もエネルギーも自分でつくらない微生物「スクナ古細菌」を発見

2026.10.13

  • 国立大学法人筑波大学
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  • 国立大学法人山形大学
  • 国立研究開発法人海洋研究開発機構
  • 東北大学・海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所
  • 国立大学法人東北大学

 これまでに知られている古細菌の中で最も小さなゲノムを持つ種を発見しました。この古細菌は、栄養やエネルギーをつくる遺伝子をほぼ失っている一方、自らの遺伝情報を複製し機能させる能力を保持しています。生物がどこまで単純になれるのかを考える上で、重要な手がかりとなる発見です。

 他の生物に依存して生きる微生物では、不要となった遺伝子が失われ、ゲノム(遺伝情報の総体)が小さくなります。その究極の形であるミトコンドリアや葉緑体では遺伝子の消失が進み、自らの遺伝情報を働かせたり複製したりする能力まで宿主細胞に委ねており、独立した細胞とは言えません。こうした能力を保ちつつ、生物がどこまで遺伝情報を削減できるのかは、よく分かっていませんでした。

 本研究チームは、海洋性微生物を対象とした単細胞ゲノム解析の過程で、未知の古細菌のゲノムを見いだしました。その大きさは23.8万塩基対で、これまで解析された古細菌ゲノムでは最小です。この古細菌は既知のどの古細菌とも遺伝的にかけ離れており、そのゲノムの小ささから、日本神話に登場する極小の神にちなんで Candidatus Sukunaarchaeum mirabile(スクナ古細菌)と名付けました。海洋の遺伝子配列データからは、近縁と見られる配列も多数見つかり、これまで見落とされてきた系統の存在が示されました。スクナ古細菌のゲノムでは、栄養やエネルギーをつくる遺伝子がほとんど失われている一方、遺伝情報を働かせ複製するための主要な遺伝子は保持されていました。本研究は、生物が自らの遺伝情報を働かせ複製する能力を保ちながら、どこまで単純になれるのかを考える上で重要な手がかりとなるものです。

極小ゲノムをもつ微生物「スクナ古細菌」の発見
図 本研究の概要図
上図:スクナ古細菌のゲノムマップ(左)と採集地(右)。ゲノムマップは23.8万塩基対の環状ゲノム上の遺伝子配置などを表す。
左下図:スクナ古細菌のゲノムに保持されている機能の概念図。代謝に関わる遺伝子をほとんど持たない一方、ゲノムの複製、転写、翻訳を担う装置の主要な構成要素を保持している。
右下図:23S rRNA遺伝子に基づく古細菌の系統樹。海洋の環境中の遺伝子配列から見つかった近縁配列を含む。スクナ古細菌とその近縁系統(赤)は、既知の古細菌とは遺伝的に大きく異なる一つのまとまりを形成する。ゲノムマップおよび系統樹は、原著論文(Current Biology)の図を改変したもの。

論文

論文名:A hidden archaeal lineage with an ultra-reduced genome retaining only its replicative core
(複製の中核的機能のみを残した超縮小ゲノムを持つ、見過ごされてきた古細菌系統)
著者:Ryo Harada, Yuki Nishimura, Mami Nomura, Akinori Yabuki, Kogiku Shiba, Kazuo Inaba, Thorsten Allers, Yuji Inagaki, and Takuro Nakayama
掲載誌:Current Biology
DOI:10.1016/j.cub.2026.09.042

詳細は 筑波大学 の
サイトをご覧ください。

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