活動報告
2026.10.8
8月24日より9月4日まで実施された、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の海洋調査船「かいめい」が、JST-ASPIREプロジェクト(※)の支援も受けながら、北西太平洋での海洋調査航海(KM26-08)から無事に帰港しました。本航海には、WPI-AIMEC研究者、および海外の共同研究者、ASPIREの支援を受ける大学院生らが参加し、幅広い海洋観測を実施しました。
※JST-ASPIREプロジェクト「海洋生態系変動の統合分析に係る研究開発と海洋頭脳循環プラットフォームの構築」では、海洋科学における知識、人材、研究文化の国際的な循環を促進する国際的な研究ネットワークの基盤構築を目指しています。
WPI-AIMECの重光 雅仁 研究員(JAMSTEC副主任研究員)が首席研究員を務めた本航海は、国内外の研究者や学生が船上で共に作業を行う貴重な機会となりました。専門分野の異なる研究者が一堂に会することで分野を越えた交流が深まり、観測結果をその場で共有しながら、融合的な研究に向けた新たなアプローチについて議論を交わしました。
今回の研究は、「生態系・物質循環から見た底層混合層と、表層混合層の、類似点と相違点を明らかにする」ことを目的に、さまざまな観測を行いました。
海洋には、海水が上下にかき混ぜられることで、温度や塩分、栄養塩などが比較的均一になる「混合層」と呼ばれる領域があります。今回の研究では、海洋の異なる深さに形成される混合層に着目し、生態系や物質循環の観点から、その特徴や共通点、違いを明らかにすることを目指しました。
航海中は、海水の水温や塩分、水深などを連続的に測定するCTD観測(Conductivity, Temperature, Depth:電気伝導度・水温・深度)をはじめ、マルチプルコアラーによる海底堆積物の採取、海中を漂う「マリンスノー」と呼ばれる有機物などの粒子を採取するマリンスノーキャッチャーによる観測、VMPS(Vertical Multiple Plankton Sampler)を用いた異なる深度からのプランクトン採取、現場濾過器を用いた海水中の懸濁粒子の採取など、多様な観測を行いました。さらに、海洋の水温や塩分などを長期間にわたって自動観測するアルゴフロート1台の回収にも成功しています。
これらの航海中に得られた多様なデータセットを組み合わせることで、早くも新たな研究テーマが生まれつつあります。航海の参加者は、2026年11月に開催予定の「ASPIRE大学院生シンポジウム」において、WPI-AIMECメンバーや東北大学の大学院生に向け、船上での経験を発表する予定です。さらに、2027年2月〜3月には国際ワークショップの開催も予定されており、研究者が一堂に会して本航海の成果をさらに共有・議論していきます。
本航海は、国際共同研究の推進と海洋生態系変動の解明に向けた統合的アプローチを目指すJST-ASPIREの目標を大きく前進させました。研究者、海外の共同研究者、大学院生らが共通の研究環境を共にしたことは、「国際海洋頭脳循環プラットフォーム」の構築を強力に後押ししています。参加した多くの大学院生からも「作業は大変でしたが、初めての研究船での経験は普段の研究の枠を超えて視野を広げ、科学的課題に対して新しい視点から考えるきっかけになった」との声が寄せられました。
またこうした取り組みは、AIMECにとっても多様な分野や機関から集まった参加者が、海洋生態系変動の理解・予測に向けて対話を深め、新たなネットワークを築く貴重な機会となりました。








リンク
WPI-AIMEC JST-ASPIRE(英語ページ)
https://sites.google.com/tohoku.ac.jp/wpi-aimecaspire/home
ASPIRE(先端国際共同研究推進事業)
https://www.jst.go.jp/aspire/index.html
海底広域研究船「かいめい」(JAMSTEC ウェブサイト)
https://www.jamstec.go.jp/mare3/j/ships/research_vessel/kaimei.html
