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2024.10.28
9月20日(金)の日本海洋学会秋季大会にて、シンポジウム「統合全球海洋観測システム OneArgo の構築と海洋融合研究の推進に果たす⽇本の役割」を主催し、声明文を公開しました。
セッションでは、JAMSTECの細田滋樹主任研究員が開会挨拶を行ったのち、須賀利雄所長が「OneArgo と Japan OneArgo センター構想の概要」について発表しました。構想の東北大学に設置されデータ利用を支援するJapan OneArgoセンターの運営は、WPI-AIMECも携わる計画としています。
さらに、水産・海洋科学研究連絡協議会に所属する17学会の会員がOneArgoへの要望や期待を寄せました。セッションの最後には、17学会および参加者一同がOneArgo推進に向けた声明を公開しました。
日時:2024年9月20日(金)9:00-12:15
場所:東京海洋大学品川キャンパス
2024年9月20日
海洋は今、地球温暖化や人間活動の影響を受け、急激に変化している。そのため、海洋環境の継続的保全と効果的な利活用を目指し、私たちは今、持続可能な開発目標(SDGs)の一つとしてSDG14(海の豊かさを守ろう)を掲げて行動している。
OneArgoは、この目標の実現に向けて基盤的かつ有効な海洋情報の提供を行うために、世界の海洋関係者が集結したOceanObs’19会合において提案された、アルゴ計画が目指す新たな海洋観測システムである。OneArgoは、2000年に開始され、必要不可欠な研究基盤となっているArgoフロートによる観測を大幅に拡張するもので、全球の表層から深海底までの水温・塩分、および6つの生物地球化学変数を計測し、統一的にデータ品質管理を行い、無償で公開することを目的としている。
OneArgoは、船舶、係留系、衛星観測などの他の観測プラットフォームと連携することで、気候変化・変動、極端現象の根本的な情報、海洋の炭素循環過程、貧酸素化の実態把握と海洋生態系応答の科学的理解を格段に促進させ、これらの確かな科学情報を、水産、海運、養殖など社会・産業のより広範な分野でこれまで以上に利活用することを可能にする。
さらにOneArgoで得られる情報は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価プロセスや気候変動枠組条約締約国会議(UNFCCC-COP)での議論、各国で実施される気候変動適応策・緩和策に科学的根拠を与える基盤となる。これらの重要性により、OneArgoの構築は、国連海洋科学の10年(UN Ocean Decade)のプロジェクトとして承認され、G7海洋の未来に関するイニシアチブ(FSOI)における重点トピックにも選定された。
以上を背景とし、私たちはOneArgoの早期実現に向けて、①海洋における分野横断的な融合的学術研究の創出とその推進、②先進技術を導入したハードウェア・ソフトウェアの技術開発とコストダウンの促進、③現業機関、研究機関との強固な連携による各種高精度データの提供、④モデリングコミュニティーとの連携を通じた気候変動、海洋環境変動の将来予測精度の向上、⑤政策、社会、産業へのより広範の情報還元および産官学連携関係の構築、⑥若手研究者、技術者の分野を超えた幅広い人材育成、を強力に推進することとしている。
私たちは、これらの推進により、OneArgo構築の重要性に対する理解の深化・普及と、その構築の加速に貢献するとともに、世界のOneArgoを主導する決意である。結果として、海洋コミュニティの研究開発力の向上が図られるとともに、我が国の国際的プレゼンスの向上に繋がるものと確信している。
水産・海洋科学研究連絡協議会の17の学会、および「統合全球海洋観測システム OneArgo の構築と日本における海洋融合研究の推進」シンポジウム参加者一同は、OneArgoの早期の構築に向けた格段の支援を希望し、ここに、声明として発するものである。
<声明賛同団体等>
水産・海洋科学研究連絡協議会参加学会
「統合全球海洋観測システム OneArgo の構築と日本における海洋融合研究の推進」シンポジウム参加者一同