コラム

海の杜(No.5、2024年10月1日)

WPI-AIMECについて-その2 アンダーワンルーフに向けて

 WPI事業では、「アンダーワンルーフ(under one roof)」が一つのキイワードです。これは、文字通り「一つ屋根の下」ということで、異なる分野の研究者が一か所に集うことで交流を深め、新たな学術分野が創設されることを期待してのことです。

 実際、文部科学省のWPI令和6年度の予算要求の説明書には、次のような記述があります。WPIの「これまでの成果」の欄の2つ目の項目です。「『アンダーワンルーフ』型の研究環境の強みを活かし、分野横断的な領域の開拓に貢献」(末尾にURLを記す)。WPI事業では融合研究の推進を謳っていますが、「アンダーワンルーフ」型の研究環境整備が成功しているとの認識です。そして、マルチホスト型WPIでも「『アンダーワンルーフ』を堅持して」と謳われています(末尾にURL)。

 WPI事業では、アンダーワンルーフ環境を実現するため、活動への支援に加えて建物整備に対しても支援がなされてきました。多くのWPIで独自の建物を整備し、分野の異なる研究者が集う活動をしているようです。

 本 AIMEC も他のWPI拠点と同様に、世界トップクラスの融合研究や若手研究者の育成が行えるようなアンダーワンルーフ型の拠点環境の早期実現に大いに期待しているところです。しかしながら、参加研究者は東北大学と海洋研究開発機構(JAMSTEC)に分かれて所属していますので、完全な形でのアンダーワンルーフ環境の実現は難しいと言わざるを得ません。

 そこでAIMECでは、物理的な制限を打破するために、運用で克服しようとしています。既に行っている試みをいくつか紹介します。まず、ほぼ毎週行っているのが「サイエンスサロン」です。毎回1名の研究者が他分野の人にもわかるように研究を紹介することにしています。2つ目は、数か月に1度、2日間にわたって行う「コロキウム」です。一人のPIが世話役となり、毎回テーマを変えて議論します。さらに3つ目として、不定期ですが「シンポジウム」も開催しています。宮城県女川町と青森県青森市浅虫の東北大学附属の臨海教育研究施設の、AIMECに参加している研究者が主導するシンポジウムです。これらの活動を通して情報の流通を改善し、実質アンダーワンルーフ状態にして、共同研究や連携研究、そして融合研究に結び付けようとしています。

 ところで、インターネット現代用語辞典「知識・情報&オピニオンimidas」では、「アンダーワンルーフ」を「異分野の専門家が交流して研究などを行うこと」と説明していました(末尾にURL)。この語釈は、きっとWPI事業が基になっているものと思われます。

【参考URL】
1.世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の概要(令和6年度版)
https://www.mext.go.jp/content/20240516-mxt_kiso-100000476_1.pdf

2.文部科学省基礎基盤研究科、2023:基礎科学の“国際的な頭脳循環のハブ”となる研究拠点政策と世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の展開(資料1)
https://www.jsps.go.jp/file/storage/j-toplevel_2022/01_public_offering/siryou1.pdf

3.知識・情報&オピニオンimidasのホームページ
https://imidas.jp/

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