海の杜(No.15、2025年8月1日)
昨年の秋以来、AIMECは精力的に「グランドチャレンジ(Grand Challenges:以下、GCsと略記)」を議論してきました。現在はその最終段階にあり、間もなく公表することができる運びとなります。本「海の杜」では、今回以降、数回にわたり、AIMEC-GCsについて紹介します。
さて、GCsとは何でしょうか。日本ではGCsを「大課題」とか「挑戦(的)課題」などと表現することもありますが、「それ以上の意味」も含まれているものとし、「グランドチャレンジ」とカタカナ表記することが一般的です。この「それ以上の意味」については次回説明することといたします。
毎年WPIでは、プログラム・ディレクター(PD)、プログラム・オフィサー(PO)、そして各WPI拠点に対して設置されたワーキンググループ(WG)のメンバーを派遣のうえ、現地で拠点活動の進捗状況をヒアリングします。これをサイトビジットと言いますが、その結果と拠点からの報告書などに基づく評価と改善のための指摘は、WPIプログラム委員会による「2024年フォローアップ結果」として拠点へ伝えられます(参考URL-1)。
今回のWPIフォローアップ報告書の中で、「AIMECが海洋生態系のあり方を変えるきっかけとなるような『グランドチャレンジ』融合研究を特定すること」との指摘がありました。AIMECは当初、3つの包括的テーマを掲げて研究者を9つのユニットとして組織していますが、研究ユニット間を跨ぐ融合研究をよりいっそう促進させる「仕掛け」としてGCsを設けてはとの指摘です。これまでも述べてきたように、WPIは、既存の学術分野の深化や進化に止まることなく、融合研究により新しい学術分野の創成を強く目指しているのです。「融合研究(fusion research)」はまさにWPIのキーワードなのです。
この指摘をAIMECは真摯に受け止め、昨年11月に東北大学農学研究科女川フィールドセンターで行ったAIMEC第3回コロキウムや、今年2月に東北大学東京オフィスで行った第4回コロキウム、そして3月に行った「All-hands Meeting(全体会合)」でもGCsを取り上げて、議論を深化させてきました。
次回は、AIMEC-GCsを紹介する前に、GCsの概念や歴史、これまで他の計画や組織で策定されてきたGCsについて紹介します。
【参考URL】
1. WPIプログラム委員会令和6年度フォローアップ結果(正本(英文):上段、仮訳:下段)
https://www.jsps.go.jp/file/storage/e-toplevel/08_followup/FY2024/FY2024_FU_Report_E.pdf
https://www.jsps.go.jp/file/storage/j-toplevel/08_followup/R6reports/FY2024_FU_Report_J.pdf