コラム

海洋瑣談(No.6、2024年11月15日)

記録を更新し続ける地球の気温

 10月8日(火)、「24年世界気温、最高見通し EU気象機関『ほぼ確実』」との見出しを持つ記事を共同通信社が配信した(参考URL-1)。同日、欧州連合(EU)の気象情報機関である「コペルニクス気候変動サービス」が、今年の世界平均気温が、これまで最高だった昨年(2023年)を超えて過去最高になるだろうと発表したことを受けての報道である。10~12月の気温が大幅に低下しない限り、今年の気温は2023年を超えることは確実で、観測史上もっとも気温の高い年になるという。

 確かに北半球の夏は世界中で高温の天候となったことが報じられていた。このためであろう、昨年ほどではなかったようだが、森林火災の報道も相次いだ。日本の夏の高温も例外ではなく、気象庁の報道発表でも、7月や9月の月平均気温が地域によっては過去最高となったことを取り上げていた(参考URL-2)

 さて、世界気象機関(WMO)の「State of the Global Climate 2023(全球気候の現状2023)」(参考文献1)によれば、2023年の世界平均気温の、産業革命以前の気温(1850~1900年までの51年間の平均気温で定義される)からの偏差は、1.45+/-0.12℃であった。すなわち、地球温暖化による気温上昇についての目標値を設定したパリ協定の努力目標である1.5℃に、わずか0.05℃に迫る値である。したがって、2024年の気温は昨年よりもさらに高くなるという今回の報道は、今年の年平均気温は初めて1.5℃を超える値になるだろうことを強く示唆している。

 実は、このパリ協定の1.5℃努力目標は、今後の5年間(2024~2028年)の中で1回は破られるだろうとの予測が、今年6月にWMOからプレス発表されていた(参考URL-3)。プレス発表の見出しは、「Global temperature is likely to exceed 1.5℃ above pre-industrial level temporarily in next 5 years(全球気温は次の5年間で一時的に産業革命以前のレベルから1.5℃超える可能性が高い)」というものである。

 上記のプレス発表は、WMOが毎年発行している翌年と翌年から5年間の予測をまとめている報告書の最新版、「WMO Global Annual to Decadal Climate Update 2024-2028(WMO 改訂 1年から10年の全球気候-2024~2028)」に基づいている(参考文献2)。この報告書では、上記の今後5年間の中で少なくとも1回は1.5℃を超えるとの予測(80%の確率)に加えて、観測史上最高気温である2023年を超える年もあること(86%の確率)、2024年~2028年の5年間平均気温は過去最高であった2019年~2023年の5年間平均気温よりも高くなること(90%の確率)なども予測していた。

 なお、この報告書記載の予測は、世界の20の気象機関や研究機関のモデルの結果をまとめたもので、日本からは気象研究所と海洋研究開発機構のモデルが参加している。

 一方で、観測によると二酸化炭素等の温室効果ガスの濃度が低下する傾向は全く見られず、それどころか、近年むしろ増加率が大きくなっている。二酸化炭素はここ10年間平均では年2.5ppmの増加率を、メタンや一酸化二窒素のここ数年間の増加率も過去50年間で最高値を取っているのである。

 今年の年平均気温は、パリ協定の努力目標である1.5℃を初めて超える可能性が極めて高い。さらに、温室効果ガス濃度の動向からは、現在続いている急激な気温上昇は、今後もしばらく続くと覚悟しなければならない。一向に進まない地球温暖化抑止の活動であるが、世代間倫理として、次世代へ良好な地球環境を引き渡すべく、諦めることなく今後も抑止の努力を進めなければならない。

ページトップへ