コラム

海洋瑣談(No.24、2026年5月15日)

40℃以上の日は「酷暑日」

 私の出身地山形は1933(昭和8)年7月25日に、最高気温40.8℃を記録した。太平洋側に高気圧が日本海側には台風があり、南東よりの風が吹いたことにより猛烈なフェーン現象が起こったからである(参考URL-1)。フェーン現象とは、湿った空気が山を駆け上がる中で水蒸気が除かれ、乾いた空気となって山を駆け降りることによって、山を越す前の気温よりも高くなる現象を指す。山を駆け上るときの湿った空気の気温の下降率よりも、山を駆け降りるときの乾いた空気の気温の上昇率がより大きいためである。

 この山形の最高気温は、2007(平成19)年8月16日に埼玉県の熊谷と岐阜県の多治見がともに40.9℃を出して記録を更新するまで、74年間も国内最高値を保持していた。近年の著しい温暖化で、2025年現在、山形の40.8℃は既にランキングで15位にまで落ちている。現在の最高気温の1位は、群馬県伊勢崎で昨年(2025年)8月5日に記録した41.8℃である(参考URL-2)

 さて、気象庁は先月(2026年4月)17日に、最高気温が40℃以上の日を「酷暑日(こくしょび)」と呼ぶことに決めたとの報道発表を行った(参考URL-3)。これまで、25℃以上を「夏日」、30℃以上を「真夏日」、35℃以上を「猛暑日」(2007年に制定)と呼んでいたが、最高気温が40℃を超えることが頻出し、新しい予報用語の導入が望まれていた。

 新しい用語を検討していることは、昨年(2025年)9月17日に行われた気象庁長官の定期記者会見の席上、記者の質問に答える形で野村竜一(のむらりょういち)長官から公表されていた。そして、今年2月27日には、新名称の制定に向けてウェブサイトで13の候補に対するアンケート調査を行うとともに、専門家の意見を聞く作業を行うとの報道発表がなされた。

 そして今回の新用語決定の報道発表である。アンケート結果は、約48万票の投票の中で、1位が「酷暑日」の約20万票で、2位が「超猛暑日」の約6万6千票、3位が「極暑日」の約2万6千票と続いた。「酷暑日」がダントツの支持を得た。

 なお、日本気象協会は2022年8月に、所属する130名の気象予報士へのアンケート結果を基に、最高気温が40℃以上の日を「酷暑日」と呼ぶことにしていたのだそうだ(参考URL-4)。このような背景もあり、多くの方に「酷暑日」がすんなりと受け入れられたのであろう。

 多くの新聞やテレビの報道からも、このタイミングで新用語を導入すること、新用語が「酷暑日」であることを好意的に受け止めていることが分かった。毎年多くの人が熱中症にかかり、中には亡くなる方もいる。今回の新用語の導入は、暑さへの対応策を喚起する際に、有効な役割を担うことが期待される。

 ところで私は、気象庁と文部科学省が共同で設置している「気候変動に関する懇談会」の会長を務めていることもあり、2月中旬、気象庁気候変動対策推進室のHさんから、新用語導入についての意見を聞かせてほしい旨のメールがあった。そこで、候補の13の用語に対して私の意見を文章にして提出した。導入できる用語は1つであるので、それぞれの候補に対して‘言いがかり’のようなものであるが私の感想や判断を書き、結論として「酷暑日」がいいのではないか、と記した。

 その中で、「超猛暑日」に対して、私は「猛暑日を『超』した気温の日、という意味だろうが、何にでも『超』を付けるのは安易な言葉使い(ギャル言葉)とのイメージがある」と書いていた。毎日新聞の報道でも、「気象庁が専門家の意見を聞いたところ、超猛暑日は『超』が軽薄な印象を与えるとして見送られた」とあった(参考URL-5)。「超猛暑日」に対しては、私の他にも同じような意見を述べた方がいたのかもしれない。

 ところで、気象庁による新用語「酷暑日」の発表当日の午前10時から、国土交通省金子恭之(かねこやすし)大臣の記者会見があった(参考URL-6)。冒頭の「閣議案件で特に報告するものはありません」に続き「1点報告があります」として、「酷暑日」を新用語として気象庁が決定したことを報告した。当日のテレビ報道の多くで、この部分の映像が使われていた。確かに気象庁は国土交通省の「外局」なので、大臣が最上位職であることはその通りなのだが、この酷暑日の決定報告は私としては気象庁長官にして欲しかったのだが…。

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