コラム

海洋瑣談(No.28、2026年9月15日)

世界地図はメルカトル図法からイコール・アース図法へ

 今月(2026年9月)4日の国連総会において、メルカトル図法に代わりイコール・アース図法による世界地図の使用を推奨する、との決議が採択されたことが、新聞やテレビで報じられた(例えば、参考URL-1・2)。

 この決議は、トーゴなどのアフリカ諸国が中心となって提案したもので、メルカトル図法では陸地の形、特に面積の点で実態と大きくかけ離れてしまうため、環境や地政学、安全保障の分野で偏見を助長する可能性があることを正す運動の一つであるという。そして、地図上でも実際の国々の面積比と同じように表現される、イコール・アース図法(正積図法の一つ)を採用することを推奨する。具体的には以下のようなことである。

メルカトル図法(正角円筒図法とも呼ばれる)では、実際は高緯度になるほど狭まる経線間の距離を、経線が平行になるように引き伸ばすのが特徴である。さらに、地図上で方位を正しく合わせるため、経度方向と同じように緯度方向の間隔も引き延ばす。例えば、緯度60度では経度方向は実際には赤道での間隔の半分になってしまうのを、2倍に引き伸ばす。それに合わせ、緯度方向の間隔も2倍にするのである。したがって、赤道域と緯度60度では、同じ面積でも地図上では緯度60度の方が4倍の面積になってしまう。

 上述のようにメルカトル図法の世界地図では、ヨーロッパやロシア、米国やカナダなどの高緯度の国々は大きく、アフリカなどの低緯度の国々は相対的に小さく描かれる。実際はアフリカ大陸の14分の1の面積しかないグリーンランドが、この図法では同じ大きさに描かれてしまうのである。

 この決議は日本を含む164か国が賛成し、棄権が6か国、反対が1か国であった。反対した国とは米国である。決議前、米国は猛烈に反対を表明し、(このような決議をすることは)「国連が信頼を失っている理由だ」とまで述べたという(参考URL-2)。

 メルカトル図法は、フランドル地方(現ベルギー)生まれのゲラルドゥス・メルカトル(Gerardus Mercator、1512-1594、本名はゲラルト・デ・クレーマー(Gerard De Kremer))が1569年に発表した地図に用いた図法であった。ただし、この図法の実際の発案者は、ドイツの天文学者、地理学者であったエアハルト・エッツラウプ(Erhard Etzlaub、1455または1465-1532)であったことが知られている(参考URL-3)。

 メルカトル図法では、先述のように方位が正しく表現されるため、海図に多用された。ある地点からある地点に向かうときは、地図上で2地点を直線で結び、その方位に船を進めれば目的地に到達できるため、操船が簡便になるのである。

 地球は3次元の球体であり、私たちはその球面に存在する陸地の上に住んでいる。そのような地形を平面に地図としてどのように移し替える(投影する)かで、様々な方法が考案されてきた。しかし、どの様な図法を取ろうとも、3次元を2次元に投影するので、どうしても近似的にならざるをえない。それぞれの目的に合わせ、様々な投影方法の地図を採用しているのが現状である。

 さて、世界地図ではどの経線を左右の中心にするのか、同じことであるが、どの経線を地図の端にするのかは、自由に設定可能である。

 日本で用いられる世界地図の多くは、日本を左右のほぼ中心に据えたものを用いることが多い。具体的には、東経150度を中心にすると、左右の端は西経30度となる。この経線は、ほぼ大西洋の中心を通る。すなわち、日本が中心となり、右側に太平洋を挟んで南北アメリカ大陸が来る。左側にはアジア大陸が広がり、左端にヨーロッパとアフリカ大陸が位置することになる。一方、グリニッチ子午線付近を中心にして、太平洋の中央部が地図の両端となる世界地図も多くみられる。

 上記のように、太平洋に切れ目を入れるか、大西洋に切れ目を入れるのかのどちらかが選ばれることが多いが、アメリカでは、アメリカ大陸を中心に描いた世界地図が使われることがあるという。確かにインターネットで検索するとそのような図を探すことが出来る(参考URL-4)。この地図では、インドの位置に相当する東経60度付近に切れ目が入ることになり、ユーラシア大陸が分断してしまう。

 ともあれ、自国を中心に持ってきた地図を使いたいという心理が働くのでしょうね。

 では、海洋研究者が使う世界地図はどこに切れ目を入れているのだろうか。世界3大洋と呼ぶように、太平洋、大西洋、インド洋が主な海である。海洋研究者が使う世界地図では、これらの大洋が分断されないように、アフリカ大陸の南端、喜望峰(Cape of Good Hope)を通る経線(東経20度)に切れ目を入れることが多いのである。

 ところで、通常、地図は北を上部、南を下部にして描く。ところが、オーストラリアではこれを逆さまにして、南を上部に北を下部にして描いた地図を作成している(参考URL-5)。北半球中心の世界に異議を申し立てるために作ったとは大げさで、そんなつもりは全くないと思うのだが。オーストラリアお土産の一つである。私はこの逆さまの地図を見ると、どうにも落ち着かない気分になります。

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